二人はお茶の友である。かふぇ寺(てら)すは六年前日本間をイタリア風にリフォームし、二人が私的に使えるようにした二階の一室。
「今年もカフェテラスに呼んでください」と添えられた隣家の友人からの年賀状をヒントに名づけた。
寺は純和風の部屋ばかりなので、ちがう世界にひたれる場所と、私的な友達と気軽に語り合える場所が欲しかった。やっとその願いがかない満足している。
住職は檀家さん参りの寺役でお茶を頂戴してくるのでこの部屋ではあまり飲まないが、じつと座っていて、一方的な私の話を聞いてくれる。
たとえば御講のお参りの前になると、私はお茶の勢いでエンジンがかかり始める。「御簾(みす)の間が散らかっている」「法衣がぶら下がっている」「座敷を開けられたらどうする」等々。住職は「そんな事いいじゃないか…気にならない」と言う。
御講は年三回、当番制でお世話をしてもらいお勤めする。お斎は真夏でもあつあつのみそ汁で、カボチャ、夕顔、丸ナス、じやが芋、油揚や豆腐を入れ大鍋で作り、フーフ一汗をかきながら黒椀でいただく。食後は勤行、御法話、御茶会でゆっくりと過ごす。毎回45名程だが、当番の方や手伝いの方が本堂から庫裏を行き来するので内情をみられているようで、戸外の花まで気になってしまう。
坊守会の役員になってからは高田別院始め各々の寺を訪ねる機会が増えた。すると自坊にない椅子や寺専用の台所があったりいろいろ新発見する。それを言うと、「あるものでやればいい」と住職。
いつもの事だが少しも私の心の奥をのぞいてくれようともしないので「貴方は冬の台所だね」と言ってしまった。頭に手をやって「いつもあったかい」すかさず住職がめずらしく言った。「おまえは冷蔵庫だ」一瞬ヒヤッとした。
負けるものか「中味は身体の源が入っているよ…」。ティタイムは終わった。
夕食を作ろうと冷蔵庫を開けた。臭い漬物、傷んだ野菜、おかずの残り。冷凍庫もみた。賞味期限がきれて一年前の物までありガサガサゴトゴトしていた。いつの間に台所に入ってきたのか「あのな、この前テレビで言ってたぞ、日本人は冷蔵庫で物を腐らせるって」住職がびっくりするほどの近さに立っていた。とがめるでもない口調にふっと和んだ。口に出さないが、物を大切にする住職の心情にふれたようで、なにやら明るい気持ちになった。
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