高田別院だより 2005年3月15日 第10号
宗祖と越後@ (1)人に依らざれ
第十三組 浄泉寺  井上 円

第十三組 浄泉寺 井上円
 親鸞聖人については、多くの人から『自己の思想信条には雄弁だった親鸞。だが、彼ほど私生活を語らなかった人もいない。』
と評されている。「鎌倉四聖」と呼ばれる法然・親鸞・道元・日蓮の説いた教えは、現代でも多くの人を引きつける魅力と大きな勢力をもっている。その中で、聖人ほど未だにその生涯の確定ができない人はいない。このために、親鸞という人は実はいなかったのではないかと、本気で考えた学者もいたという。

 それはたまたま語らなかったのではなしに、お釈迦様の遺言の一つとされる。『法に依りて人に依らざるべし』という教えを大事にされた信念によっていると考えている。功成り名を遂げれば、私事を残したくなるのが普通である。しかし「弟子一人(いちにん)ももたず」と言い、「死んだら魚の餌になって構わない」と言って、自分のことは忘れられて結構、ただ自分の所に伝えられた本願念仏の教法さえ間違いなく後の世に伝わってくれればいい、そんな信念から不必要な私事を語らなかったのであろう。さらには、第三者が記述する公の文書にもほとんど残らなかった。

 こういう態度は、聖人に直接出遭った人達にも伝わったようで、聖人の生涯をまとめようとする人は出なかった。そこに聖人の一生を歴史的な事実として確認し難い根本的な理由がある。
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